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高森明勅
2014.11.27 13:17

思し召しで昭憲皇太后「百年」式年祭

ちょっとした事情があって、
今年これ迄に行われた皇室祭祀を確かめた。

すると、4月11日に昭憲皇太后百年式年祭が執り行われている。

式年祭というのは、決められた年(式年)
ごとの崩御日に当たる日に
行う祭り。

今年は、明治天皇の皇后だった昭憲皇太后が崩御されて百年。

そこで、大きな区切りの式年祭が行われたのだ。

勿論、その事実そのものは、かねて承知していた。

だがこれは、今も皇室祭祀のあり方の規範になっている
旧皇室祭祀令の規定に、
当てはまらない。

後れ馳せながら、そのことに気付いた。

言うまでもなく、皇室祭祀令の法的な効力は既に失われている。

しかし、伝統を重んじる皇室祭祀では、
戦後も極力、
それを尊重して来た。

ところが、旧皇室祭祀令では
先帝以前三代の(天皇の)式年祭」の規定はあっても(第12条)
三代も前の“皇后”の式年祭など全く予定していない。

「はて?

旧皇室祭祀令に含まれない祭祀が行われるとは珍しい。

早速、宮内庁の報道担当セクションに電話を入れた。

どうやら私以前に、これについて取材した者はいなかったようだ。

ちゃんと調べてから回答して下さるとのこと。

一度、電話を切って待つこと暫し。

先方から電話。

「お待たせしました。掌典職に確認しました。
確かにご指摘の通り、
この式年祭は旧皇室祭祀令には規定がありません。
でも思し召しによるものです」

瞬間、全身に電流が流れたような衝撃を受けた。

何たること。

周囲が、ご高齢の陛下のご負担を僅かでも軽減しようと
苦心している最中、
巨大なご負担を平然とお引き受けになって、
陛下はかくも大切なお祭りを思い立ち、厳かに執り行われたのだ。

まさに日本最高の「祭り主」たる陛下なればこそ。

それにしても、こんな重大な事実に今頃やっと気が付くとは。

我が身の迂闊さを恥じ入るのみだ。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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